マイナビと社会課題をつなぐ「架け橋」へ。
「パーパス」ってなんだろう?
「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。
《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》
これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。
2005年以来、マイナビグループが純利益の1%を積み立ててきた基金をもとに設立された「マイナビ世界子ども教育財団」。
国内外の教育支援活動を軸に、子どもを取り巻く社会課題の解決に向き合うのが、マイナビ世界子ども教育財団事務局長・児嶋祐佳だ。
ミッションが明らかだったビジネス環境から、明確な評価軸のない非営利団体に飛び込んだ児嶋。正解のない世界で、企業財団だからこその存在意義を模索する彼女は、力強くこう繰り返す。
「できるときに、できる人が、できることをやる」。
どこかで社会課題に関心は持ちながらも、その壁の大きさ、高さを前に立ちすくみがちな、私たちの一歩をあと押ししてくれる言葉だ。
『選択しなければいけない』現実に直面した。
マイナビのパーパスを聞いたとき、児嶋は「難しい挑戦」と感じたという。
児嶋は、2008年4月に新卒でマイナビに入社し、アルバイト情報事業本部に配属。その後2016年4月に社長室世界子ども支援課へ異動。同年11月には、一般財団法人マイナビ世界子ども教育財団(以下、マイナビ財団)の立ち上げに携わり、事務局長に就任した。
「今マイナビのなかで、貧困や格差、子どもを取り巻く社会問題に、もっとも近い存在がマイナビ世界子ども教育財団ととらえています。マイナビのパーパスと同様に、私たちも『一人ひとりの可能性と向き合いたい』という想いが活動の源泉。しかし、実際に支援をするなかで、それが行き届かない方が多いことも痛感しています」
マイナビ財団に配属されて7年余り。限られた人的・金銭的リソースのなかで、助けたくても助けられない人がいることに苦しむ非営利団体の多さを知り、自分たちも誰を助けるかを「選択しなければいけない」現実に直面した苦悩を、児嶋は振り返る。
「パーパスが明文化されたことで、従来のマイナビのサービスでは焦点をあててこなかった人たちの可能性にも向き合えるようになったと、個人的に解釈しました。私の役割は、クライアントやユーザーだけでなく、その外側にいる人たちも取り残さず、彼・彼女らとマイナビをつなげることではないかと感じています」
「営利」と「非営利」の世界では話す言語が違う。
マイナビ財団を設立して、まず児嶋が取り組んだのが、ミャンマーでの学校建設、貧困層向けの教育奨励事業、そして日本語教育事業だった。
「団体を探して寄付するという方法もありましたが、マイナビ財団は、規模は小さくなっても、できるだけ直接支援する方法を選びました。途上国のなかでもミャンマーを支援対象に選んだのは、アジア最貧国といわれつつも、今後社会全体としてよくなっていこうという波があり、私たちのようなあたらしい組織の支援であっても積極的に受け入れたいというニーズを感じたからです。とはいえ、社会貢献活動に縁のなかった私にとっては『学校を建てるって、一体どうすればいいの? 』と思いました」
入社時に、新規事業立ち上げに携わった経験から、あたらしいチャレンジには先輩からの知見や伴走してくれる仲間が不可欠であることを自覚していた児嶋。まずは日本で、今回の支援に関連する団体に、手当たり次第話を聞いて回った。
そして、入社してはじめての海外出張になったミャンマー。日本でつないだ縁をもとに、果敢に現地の団体にアポイントを取って面談を重ねた。意欲的な行動の裏では内心、財団や自分の存在意義をまだ掴みきれずにいたが、現地の人々と話すなかで少しずつ見えてきた糸口があったという。
「事業部で働いてきた私は、売上やお客さま満足度などの基準を重視してきました。しかし、そういった価値基準ではない世界を知れたのが、ミャンマーにおける最大の学びでした。また同じ国の人であっても、営利企業にいる人と、非営利団体の人とは世界観や話している言語が違うとも感じて。私はその“翻訳者”や“橋渡し役”になれたら嬉しいと思ったんです」
当時、貧困であることが珍しくないミャンマー。実際に現地の人々と接して、社会課題がどのように現場で起きているのかを肌で感じ、大きな衝撃を感じたと語る。
「自分たちと何も変わらない普通の人たちが、自分たちではどうしようもできない構造のなかで、厳しい課題に直面していることが衝撃でした。営利を追い求めていると気づく余裕がありませんが、社会にはたくさんの課題があり、それを解決しようとしている方たちが数多くいます。マイナビをひとつの人格と考えたとき、営利活動とともに非営利の事業も行うことで、多様な個性を持つ存在になって、より魅力的になると思うんです。そしてその役割をマイナビ財団が担えたらと」
「日本の子どもへの支援」で社員がつながった。
それから児嶋は、ミャンマーで3つの学校を建設するため尽力。現地のフリーマガジンで、大学進学の意義を分かりやすく伝える記事を作成し、掲載したところ、読者のなかで大学進学への意欲に変化が見られた。
「貧困層であっても、大学に行かなくていいと思っている家庭は実際は少ないんです。進学した方がいいのは知っているけど踏み出せない方たちに対して、適切な情報を提供することで、彼らの一歩を少しだけあと押しすることができる実感がありました」
しかし、企業財団としての成果について、明確な成果基準がないことは、マイナビ社員としての児嶋に「社内で存在価値を理解されづらい」という孤独感をもたらしてもいた。転機となったのは2021年、日本の子どもたちへの支援活動がスタートしたことだ。
「実は財団設立初期から、日本の支援に取り組みたいと考えてきました。しかし、日本の子どもをめぐる貧困の状況は『相対的貧困』(その国や地域の水準のなかで比較して、大多数よりも貧しい状態のこと)であるなど、途上国よりも複雑な面があるため、最初は踏み出すことができずにいたんです。新型コロナウイルスやクーデターの影響でミャンマーへの直接支援が難しくなったこともひとつのきっかけですが、ミャンマーで経験したことを、ようやく日本で生かせるタイミングになりました」
皮切りとなったのは、コロナ禍で行った『子ども応援!マイナビ財団食料ボックス』の配布企画。経済的不安を抱える日本の家庭の中高生に、お米5㎏、野菜(にんじん、じゃがいも)、めん類、お菓子、デザートなどを届けた。この施策には社内からの思いがけない反応が相次いだ。
「食料ボックスの送付にあたって、中身の選定や発送、アンケート集計など、マイナビの事業部やグループ会社と行いました。また、食料ボックスを送付する際、マイナビ財団からの手紙とともに、マイナビ社員の応援メッセージ文を同封しました。社内ポータルでメッセージを募ったのですが、私がまったく知らない、さまざまな部署の社員が手を挙げてくれたんです。これまで複数回、不定期で実施してきましたが、毎回参加してくださる方もいますし、あらたに参加される方も常にいます。日本で支援活動することの良さは、社員が財団を身近に感じてくれることですね」
自分たちの仕事の結果が、日本の子どもたちにわずかでも役立っていることに仕事へのモチベーションが高まったという社員の声も多く届けられた。児嶋が社内で行った、シングルマザーの問題についての講演を聞いた、営業部社員のエピソードも印象的だ。
「その社員のクライアントが抱えていた人材不足の採用課題に対し、シングルマザーが担い手になることはできないかと、講演後に相談に来てくれたんです。その社員へ今までにない視点を提示できた手応えがありました。そんな小さな変化が、全国に1万3,000人以上いるマイナビグループ社員一人ひとりのなかに起こることで、マイナビ全体にも反映されることがあるかもしれません。それが、結果としてマイナビの未来につながれば、企業財団として理想的です」
マイナビだからできる社会課題解決を。
マイナビだからできる社会課題解決のあり方。マイナビグループの社員は、この大きなテーマとどう向き合っていくべきなのか?
「『できるときに、できる人が、できることをすればいい』と考えます。マイナビで働く全員に、社会貢献活動をしてほしいとは思いません。私自身、マイナビのなかのいち仕事として向き合っていて、だからこそこれまで培ったビジネススキルやマインドが活動に生きている部分も大きいと感じています」
マイナビ財団が日本で最初に取り組む直接支援としては、現実的に食料支援しかなかったのも事実だと児嶋は言う。
「食料支援は一時的なもので、貧困の根本解決にはなりません。しかし、それをきっかけにつながった子どもたちや親御さんたちに対して、仕事やキャリアについて学び、働く機会や情報を提供することまでを目指しています。その一環として、私が新卒で配属されたアルバイト情報事業本部とコラボレーションして、経済的不安を抱える家庭の高校生を対象に『アルバイトの探し方講座』を開催しました」
実施の背景には、貧困に悩む高校生は在学中にアルバイトをする可能性が高いこと。また、保護者が非正規雇用のケースも多いため、正社員としての働き方のベースとなる話を聞きたいというニーズに応えたことがある。
「彼らの目線でマイナビのアルバイト情報サービスを使ってみると、どこに何があるのか分かりにくかったり、本当に欲しい情報が探せなかったりします。それは、通常の事業を展開するなかでは、なかなか気づきようがない視点。私たちが非営利活動で得た気づきを、マイナビの社員へ伝える重要性と責任を感じています」
世界には営利領域だけでなく、非営利領域も大きく広がっている。互いに循環しながら、両輪としてまわることで真に持続可能的な社会になるはずだ。マイナビのなかでその最前線にいる彼女は、パーパスの体現者としても存在感を放っていくだろう。
一般財団法人マイナビ世界子ども教育財団 事務局長
児嶋 祐佳(こじま・ゆうか)
2008年新卒入社、アルバイト情報事業本部制作職に配属後、留学のための休職を経て、事業推進部門へ。市場分析、CRM企画を担当する。
2016年4月、社長室 世界子ども支援課に異動。2016年11月、一般財団法人マイナビ世界子ども教育財団を立ち上げ、以降は事務局長を務める。