多様で強い組織を育てる「採用」を追求する。
「パーパス」ってなんだろう?
「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。
《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》
これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。
採用を通して「人の可能性」とどこまでも向き合い、人と組織の成長を支える。それが人事統括本部 人材開発部を率いる谷本健次のパーパスだ。
18年間の営業経験を通じて人に寄り添ってきた谷本は、人の可能性を引き出すのは「対話」だと主張する。マイナビの採用業務や人事研修に携わるようになり、よりその重要性が身にしみるようになった。
パーパスが策定され、先の未来に向かって一致団結すべき今、マイナビが求めるのは、どんな人材なのか。谷本はどんな思いを持って、自身が果たすべき役割と向き合っているのか。
深く長い関係性を求めて。
6年間にわたり不動産営業に携わった後、2007年にマイナビに中途入社した谷本。前職では、顧客と真摯に対話をしながらニーズを引き出し、数十年後の顧客のライフプランを想定し、資金計画を立て、家を売っていた。そんな職務に強いやりがいを感じていた一方、寂しさを覚えることも少なくなかった。
「マイホームは、お客様にとって人生で一番高い買い物で、自然と深いお付き合いになります。ですが、相手に寄り添いよい関係をつくれても、鍵のお引き渡しをした瞬間、営業としての役目を終えます。それが寂しかったんです。自分の提案がつぎの取引につながり、お客様との関係性も長く続いていく。そんな仕事をしたいと思うようになりました」
BtoCではなくBtoBの営業を突き詰めたい。それが谷本の出した結論であり、マイナビに転職した理由だった。
入社後は、就職情報事業本部の営業を12年間やりきり、異動により人事統括本部・採用部(現・人材開発部)に身をおくことに。営業一筋だった谷本にあらたなミッションが課せられた。
「異動したのは、ちょうど40歳になる年でした。40代をどう過ごすか考えていた矢先の出来事で、節目のタイミングによい挑戦の機会を得たように感じました」
求めるのは「主体性」を発揮できる人。
創業50周年を迎えた今、マイナビが採用の軸に据えるキーワードは“多様性”だ。ものごとの移り変わりが激しい現代では、組織全体に迅速な変化が求められる。同質な人材の集まりでは、発展性に欠けた組織になりかねない。
「各現場に求める人材が異なるので、多様性の重要性は痛感します。パーソナルデータなどの客観的な指標と、応募者との対話を掛け合わせて、多様な人材を獲得できるよう努めています。一方で、入社後に当社で活躍する人の共通点は『主体性』だと考えています」
誤解されがちだが、主体性は「自主性」とは異なる。谷本はそう念押しする。
「自主性は決められた範囲のなかで率先して行動する性質ですが、主体性とは、自分で状況を判断し目的を明確にし、みずからの責任でもっとも効果的な行動をとることができる人です。ものごとを動かすみずからの行動力と、どうすれば最適かを考える力のことです。誰もが持っている力ですが、それを発揮できるかどうかが重要です」
まさに社員の主体性が発揮された出来事があった。忘れもしない2011年3月、東日本大震災で未曾有の危機に襲われた東北。その様子を見て、仙台にいる就職情報事業本部の社員が、被災地での就活イベントを企画した。現地の大学生が就職機会を失うことはあってはいけない。
GW明けの5月に実施し、約1,000人もの学生が訪れた。寄付で調達したスーツを身にまとった学生たちが、その場で履歴書を書き、面談する。そんな光景を見て、こみ上げる気持ちを抑えきれなかったと、谷本は振り返る。
「私はイベントに賛同してくれる東京の企業を集め、現地入りしました。これまでのお付き合いが実を結び、形になった瞬間だったなと。社員が行動を起こし、さまざまな人を巻き込み想いを結実させる。マイナビの主体性を表す象徴的なシーンでもありました」
一人ひとりの主体性が「強い組織」をつくる。
新卒採用では、内定から入社一年目の終了まで、継続したセルフリーダーシップ研修を実施している。セルフリーダーシップとは、「目標に向かって自分を率いていく能力」のことだ。ここでは、目標の考え方、目標設定の基本から学んでいく。そのなかでも、苦しい環境におかれた場合に必要とされる「レジリエンス(回復力、復元力、弾力)」は、大事な力のひとつだと考えている。
「できることが増えていくなかで、つぎの目標が明確になったり、周囲からの期待が具体的にわかることがあると思います。と同時に、ギャップも生じます。そのときの感情にどう向き合うか、自分自身の傾向を事前に検証することを研修で行っています。ギャップを感じた事実は変えられないとしても、自分の感情を理解しておくことで、成長につなげてもらうためです」
「とにかくがんばります」という意気込みも大事だが、それだけではいけない。どんな状況におかれても冷静に対処できる力を養うため、内定から入社後一年間に渡ってプログラムを実施している。
一定のキャリアを積んだ後には、自身の希望にもとづいて異動に挑戦できる「社内公募制度」も用意されている。2017年から始まった同制度は、2022年から募集枠を増やし、応募機会も年1回から2回に増設された。
「マイナビには幅広い事業領域があります。社員が一人ひとり自分自身に向き合い、自律したキャリアを描き続けて欲しいと思っています。社員が多様なキャリアを望み、その選択肢があり、そのための能力向上へ積極的に取り組める人事制度が整い始めています」
こういった研修や制度が功を奏したのか、一昔前と比べて退職率など改善傾向にあるという。ただ、それらが理想的な組織につながっているかを判断するのは、これからだと谷本は表情を引き締める。
「一人ひとりの主体性を養うことこそが、強い組織を育てていきます。そのためには、十分な経験を積んで自分がやりたいことを具体化するプロセスが必要です。私もそうでしたが、スキルと自信を身につけることで、仕事の意義が明確になってくるはず。そのためにも創立50周年の今、パーパスを定めたことには大きな意味があるように感じます」
人材の可能性を引き出すのは「対話」の力。
主体性が問われる「状況判断」の大事な視点として、相手を主語にしてものごとを考えらるかどうかで、その後の行動は大きく変わってくる、と谷本は考えている。「もっとよくしたい」「これから何ができるか」を常に考えることがクライアントやユーザーの満足度を高め、引いては事業の発展につながるのだ。
「採用面接では、結果よりもプロセスを注意深く見ています。どんな状況において、何を考え、どう行動したのか。じっくり対話をしながら、一人ひとりの可能性を引き出すことに努めています」
「採用に携わるようになり、人の可能性をより強く感じるようになった」とも、谷本は言う。入社時には頼りなく見えた新入社員が目覚ましく成長していたり、表彰されるほどの結果を残したり。予想を超えて躍進する姿を見るたび、「人はこんなにも変わるのだ」と教えられてきた。
「研修や自己研鑽も大事ですが、人から受ける影響の大きさは計り知れません。社員の可能性を引き出すために、もっとも期待しているのは『対話』の力です。1対1でとことん話し尽くすことが、相手が変わるきっかけになると信じています」
たとえモチベーションを引き上げるのが難しい社員がいても、可能性を見込まれて入社に至った一人である。だからこそ、相手の可能性をあきらめてはいけない。相手の可能性の花が開くまで、対話をし続けなければならないのだ。
社員・組織・社会の好循環を生み出したい。
仕事において、谷本が大事にしているのが「目標」と「目的」の2つを持つこと。例えば、営業なら売上や成約数が目標となり、それを達成すれば一定のやりがいを得られる。しかし、それだけではモチベーションは長続きしない。
「目的とは、言い換えれば『何のために仕事をするのか』という働く意義です。数字だけを追っていても飽きてしまう。仕事を通じて社会をよくしようとするような使命感がないと、人は長くがんばり続けられないのだろうなと。だからこそ私はマイナビのパーパスをポジティブにとらえていて、ストンと自分のなかに落とし込めました。ほとんどの社員にとっても、少なくとも『一人ひとりの可能性と向き合い』という部分は、違和感がなかったのではと思います」
企業の目線は常に社会に向くべきであり、そこで働く社員も同様だ。
「人事統括本部は、まさに人の可能性とダイレクトに向き合う役割を担います。そうして入社した社員が成長し、できなかったことができるようになっていく。その結果、組織が強くなり、社会によい影響をもたらし、社会が変わる。そんな好循環を構築していけたらと。仮にマイナビから離れて羽ばたく社員がいても、着地した先で『さすがマイナビ出身だね』と言われたいですね」
社会人になってから、人に寄り添うことに人一倍のやりがいを感じてきた谷本。社員一人ひとりが持つ可能性を見出し、対話によって一人ひとりの価値を引き上げる。穏やかな口調とは裏腹に、谷本の胸にはその覚悟が宿っている。
株式会社マイナビ 人事統括本部 人材開発部
谷本 健次(たにもと・けんじ)
6年間にわたり不動産営業を務めた後、2007年に毎⽇コミュニケーションズ(現・マイナビ)に中途入社。就職情報事業本部に営業として配属され、企業の新卒採用事業の採用広報・採用戦略に携わる。
2019年に人事統括本部へ異動し、新卒・中途採用から新入社員及び内定者の育成、入社支援を担当。その他、2021年からAI研究・推進プロジェクト、2022年のパーパス策定プロジェクト、2023年の50周年記念事業プロジェクトにも関わる。