PURPOSE STORY

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チームの中で「個」は輝く。

株式会社マイナビ 取締役 常務執行役員 西 達矢(にし・たつや)

「パーパス」ってなんだろう?

「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。

《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》

これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。





会社の役割と進む方向を定め、誰にでもわかる言葉に落とし込む。それがマイナビのパーパス策定プロジェクト事務局長に任命された、取締役 常務執行役員である西達矢の大きな役割だった。

マイナビはこれまで、個々の営業力を強みとして成長してきた。そのような社風の中で、西は「大切なのは個の力が集まったチームだ」という。そして「それは入社以来感じ続けてきたこと」でもある、と。

「完璧な人なんていない。一人ひとりの強みを足し算して、チームで輝けばいい」

西はなぜチームにこだわるようになったのか? これまでの彼の歩みとパーパスの策定について、話を聞いた。

なによりも価値を提供したい。

2022年秋、マイナビのパーパスは発表された。パーパスを策定するにあたり、中心となってプロジェクトを進めたのが西だ。マイナビは2023年に創業50周年を迎える会社。なぜ今になってパーパスが必要だったのだろうか。その疑問に対して、西はこう答えた。

「実は、これまでのマイナビには『そもそも何のために事業をやるのか』『どこに向かって行くのか』といった共通した想いが明文化されていなかったんです。その中でも、社員一人ひとりの努力と、成長を求める貪欲さで会社を成長させてきた。だから、行動の背骨になるものがほしかったんです」

パーパス策定以前も企業理念はあった。それは「日常生活に普通に存在するマイナビになる」というもの。マイナビがまだまだ多くの人に知られる存在ではなかった時代に、「人々の日常に浸透したい」という思いを込めた言葉だ。「ただ、世の中に知ってもらいたいっていうのは、それはマイナビ側の願いですよね。社会やお客様に貢献すれば、おのずとマイナビを知ってもらえると思うんですよね。たとえ知られていなくても、価値を提供できればいい」

30年勤めて取締役になってなお、現場に対して熱い思いを持つ一方で、一歩引いた客観的な目でマイナビを見つめている。

感じていたことはみんな一緒だった。

そんな西はパーパスを策定するにあたり、全社員に無記名アンケートを行い、およそ3,000人の回答が集まった。心地いい言葉だけを集めても意味がない。ポジティブなことだけではなく、マイナビに足りないものも率直に聞いた。

「結果は、『事業部の壁が厚くて連携が取れていない』とか『営業職がクローズアップされすぎている』とか、すでに僕が感じていたのと同じ意見が多く出ました。若手社員の方々と認識が一致しているのを確認できたのは大きかったですね」

西を含めたパーパス策定プロジェクトのメンバーは、アンケートの結果を踏まえたうえで何度も話し合いを重ね、マイナビの「これまで」と「これから」をパーパスに落とし込んでいった。そしてついに、《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる》というフレーズにたどり着いた。航海のための羅針盤が、ようやくできあがったのだ。

一人ひとりの強みをつなぎ合わせる。

パーパスの策定によって、西は「個」から「チーム」への変化を予感しているという。

「この20年間、マイナビは個々の力で成長してきました。社内でも競争しあい、切磋琢磨して成績を上げて大きくなってきた。ただ、その戦い方を変えるときがきた」

30年間マイナビの第一線にいる西には、だんだんと違った景色が見えてきた。

「たとえば個人で営業をするとなると、売るためのノウハウをすべて一人で備えていないといけない。けれどチームなら、プレゼンが得意な人もいれば分析が得意な人もいて、それぞれの強みを足し合わせることができる」

個を集めたチームで、一人ひとりの強みをつなぎ合わせて戦う。それは、パーパスにあるとおり「一人ひとりの可能性と向き合い」、何かを成し遂げようという考え方にも通じる。西は真摯な眼差しで続ける。

「マイナビのパーパスには5つのバリューズがセットになっています。パーパスとバリューズ、両方があって完成する。一人ひとりがバリューズという価値観を大切にすることが、パーパスの実現につながるという考え方をしています」

「バリューズの中で「感謝と敬意」「ウェルビーイング」は全員に共通すべき価値観だと思いますが、5つすべてを兼ね備えている完璧な人はなかなかいません。だけど、一人ひとりが強みを生かすからこそ、5つのバリューズをチームとしても会社としても体現できる。それがパーパスの実現につながるんだと思います」

では、パーパスが浸透さえすれば社員一人ひとりの価値観も変わるのだろうか? 西の答えは「NO」だ。

「それには人事制度や組織のあり方を変えなきゃいけない。パーパスは、仕組みを変えていくにあたっての背骨です」

あくまでパーパスは指針で、それ自体に効力があるものではないと話す。とはいえ、パーパスを公開してからというもの、エンゲージメント指標が上がったなどの効果が表れたのも事実だ。

全員にスポットライトを当てたい。

チームに重きをおく西だが、彼がマイナビに入社した1993年は今よりもっと激しい競争社会だったはずだ。彼は、いつから現在の価値観を持つようになったのだろう。変遷を辿るべく、入社当初を振り返ってもらった。

「もともと僕は起業したくて、5年で会社を辞めるつもりだったんです。すでに商品力がある会社で5年やっても実力は身につかないと思って、自由にやらせてくれそうな当時の毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に入社しました。入社後は営業で結果を出すのが楽しくて、仕事に没頭しました」

マイナビに入社した理由もその後の働き方も、強い「個」として力をつけることに向かっていた。

そんな折、「チーム」を意識するきっかけになった出来事があった。西は昔を思い出すように目を細め、ふっと苦い表情を浮かべる。

「当時は違う名称でしたが、『マイナビ就職EXPO』の第一回目を成功させたとき、社内でとても評価されたんですね。だけど、イベントを手伝ってくれた編集の方々にはスポットが当たらなかった。変えていかなきゃいけないと思いました」

入社から5年が経ち、会社を辞めようとしたところでポジションが変わった。10年が経ち、今度こそ本当に辞めようとしたとき、さらにあたらしい課題を与えられた。目の前の課題に懸命になっていた西は、「マイナビを変えたい」という想いのもと、パーパス策定というマイナビのこれからを考える中心的な役割を担う存在になっていた。

パーパスを実現できる仕組みを。

西には最近、「チーム力の大切さ」を感じる出会いがあった。今年から、WEリーグに所属する女子プロサッカーチーム『マイナビ仙台レディース』を運営するグループ会社の社外取締役になったのだ。西は「サッカーチームと会社は似ている」と語る。

「ベテラン、若手、外国籍の方と、多様な選手がいる。一人ひとりの可能性と向き合っているからこそ、チームの中で『個』が輝くんですよ。社員のみんなが『マイナビ仙台レディース』から、チーム力の大切さを感じ取ってくれたら嬉しいですね」

チームの中で「個」が輝く。それは、多様なチームメイトたちの中にいるからこそ、自分の個性や役割がより明確になるということかもしれない。あるいは、チームメイトから自分でも気づかずにいた強みを教えてもらうこともあるだろう。会社員でも、そういうことは多々ある。

最後に、西自身のパーパスを聞いてみた。

「社員みんながパーパスを体現できるように、会社の仕組みを整えていくことが僕の役割です。仕組みが整い、パーパスがカルチャーとして社員全員に根づいたら、自然と望む方向に進んでいくと思います」

仕組みが整い、社員一人ひとりがパーパスとバリューズのもとで行動するマイナビ。そこでは、一人ひとりが完璧でなくても、チームで輝けばいい。競争から共創へ。マイナビという船は、新たな航海に出た。

株式会社マイナビ 取締役 常務執行役員

西 達矢(にし・たつや)

1970年生まれ。1993年、毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)入社。
就職情報事業本部の大阪営業部に配属になり新卒採用に携わる。2003年、社会人情報事業部へ異動し、ビジネスパ ーソン向け情報メディアの編集課⻑に着任。
2004年に事業部⻑代行(2005年に事業部⻑)へ。2012年には『マイナビウエディング』をはじめとする新規メディア事業の立ち上げに従事。2021年12月より現職。