PURPOSE STORY

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デジタルの力で、マイナビを、世界をつなぐ。

株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 本部長/執行役員 坂本 一弘(さかもと・かずひろ)

「パーパス」ってなんだろう?

「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。

《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》

これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。





「あらゆる人が、デジタルの恩恵を受けられる社会を実現する」。

それは、マイナビという会社が目指すものであり、坂本自身のパーパスでもある。その実現に向けて、2022年10月、デジタルテクノロジー戦略本部が発足し、坂本が本部長に就任した。同部門が担うのは、マイナビを横断するデジタル戦略の遂行だ。

マイナビが展開する50以上のサービスを横断的につなぎ、顧客体験(CX)を向上させる。坂本は、そのためにどんな青写真を描き、どんな想いで業務に向き合っているのか。

デジタル領域の強化は必然だった。

「3年働いたら退職して、30歳で起業するつもりでした」

マイナビへの入社理由をたずねると、坂本は開口一番にそう答えた。2002年にWebコンサルティング企業に就職。Web戦略の推進に従事したあと、2007年に毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に転職した。

転職の動機は、伸び代がある分野の新規事業に携わりたかったから。マイナビに入社し坂本に与えられた任務は、当時スタートしたばかりの新規事業「マイナビバイト」の立ち上げだった。心のなかでは、3年ほど勤務して経験値を得たら、独立するつもりだった。だが、結果的にマイナビに残った。坂本のなかで、どんな心境の変化があったのか。

「マイナビに残ることを決意したタイミングは2度ありました。1度目はちょうど30歳のときです。リーマンショックによって事業的に苦しい状況に陥り、その影響でマイナビバイトの多くの立ち上げメンバーが退職しました。その状況を目の当たりにして『この事業を簡単に放り出すのは違うな』と思ったことが理由です。2度目はリーマンショックを乗り越え、より成長していこうというとき。これまで一緒に汗を流してくれて同じ想いで戦ってくれているメンバーを大切に想っていましたし、そういったメンバーがいるのに、『あとはよろしく』と投げ出せないと思いました」

その後、2013年に「マイナビバイト」のメディア運営責任者、2015年には同事業の事業戦略とメディア戦略の統括責任者へ昇進し、先頭に立って事業を成長させてきた。

そして、2021年にあらたなミッションが与えられる。システム統括本部に異動し、全社のデジタル戦略の構築、体制の整備に従事することになったのだ。同年12月には経営体制が刷新され、本格的にデジタル領域を強化しようという経営トップの意思決定により、翌2022年、IT及びデジタルマーケティング部門を統合したデジタルテクノロジー戦略本部が設立。坂本が本部長に就任した。

「マイナビバイトの統括責任者時代から、既存事業の成長とあらたな領域のイノベーションを起こすには、デジタルを強化してサイロを解消すべきだと主張していました。当時、マイナビバイトはまさにデジタル化の過渡期にあり、もう一段うえのステージにいくには、全社のアセットを利活用した横断的な取り組みが必要不可欠でした」

※サイロ:組織や業務プロセス、各種システムが孤立し、情報が連携されていない状態

マイナビの成長には、CXの向上が不可欠。

デジタルテクノロジー戦略本部の使命は、マイナビ全社のデジタル戦略をIT×デジタルマーケティングの掛け合わせで推進し、事業サービスに反映させ、CXの向上を図ること。そのためのロードマップを策定し、チームの指揮を取るのが坂本の役割だ。

「チーム編成においては、デジタル戦略を構築し、それを実行・達成するために必要な社内のデジタル人材を洗い出したうえで、各事業部長と対面で話してあらたな組織のメンバーになってもらえないか交渉しました。当然さまざまな考えがあり、必ずしもスムーズに事が運んだわけではありませんが、一度で折り合いがつかなければ、二度、三度と足を運ぶなど草の根的な活動の末、ようやくスタート地点に立ちました」

マイナビが目指すのは、デジタル企業への大転換ではない。しかし、坂本は「それぐらいのビジョンを持って取り組みます」と、強い意思を示す。

「現代のWebやサービスの中心は、CXにあります。テクノロジーを駆使してCXを向上させない限り、ビジネスの成長はないでしょう」

同部では、節目となる2030年をひとつの目安とし、4つのステップを設けている。

「急に大きなことはできないので、ステップを切って進めています。まずは足元の整備、基盤の強化、業務改善としてステップ1をおきつつ、ステップ2でありとあらゆるシステムの連携とデジタル投資の可視化、最適化を。ステップ3でデジタルと各事業を掛け合わせたビジネス変革、イノベーションの創造。最終段階のステップ4では社会変革を目指します。CX向上の肝がサイロの解消であり、まずはマイナビが持つ50以上のサービスの基盤や情報をつなげるのが先決です。そこからビジネス変革を生み出し、さらには社会変革へと発展していくことを目指します」

アーリーアダプターを集め、社内から変える。

2023年10月現在、同部には約500名のメンバーが在籍する。既存部署でITやマーケティングを担っていたメンバーもいれば、新卒や中途のメンバーもいる。ゆくゆくは全社員の10%にあたる規模への拡大なども検討しているという。

本部の発足から1年が経過した現在は、ステップ1・2に引き続き注力しつつ、ステップ3に着手し始めたところだ。Web3やメタバースのプロジェクトを立ち上げたり、AIの活用を検証する体制を整えたり、ビジネスの変革に直接的につながるような取り組みが増えている。

「社員たちの働き方も変わり始めています。以前からも進めていましたが、ステップ1でインフラを整え業務改革に着手したことで、すでに何百時間もの労働時間削減を実現し、データの民主化の一環として開発したツールの利用者も1,000人を超えました。最近では新規技術×業務改革の事例も出てきています。特にAIの領域は進みつつあり、求人原稿をAIで自動生成するシステムの開発や、求職者と企業をAIで自動でマッチングするシステムが、社内に導入されています」

大胆な業務改革はときに反発を生むが、坂本はどのように社内の理解や浸透を促しているのか。

「あなたの業務を『AIにおき換えます』と伝えたら、反発が強くなりますよね。代わりに『アシスタント』と表現して、抵抗感がやわらぐよう配慮しています。私たちが注力しているのは、誰もが使いやすいツールを提供し、研修を実施して、アーリーアダプターになってもらうことです」

ITに強い一部の社員だけがデジタルツールを活用しても、マイナビ全体の変革はない。とはいえ、強制的にツールの使用を推進しても反発が高まる。そこで「みずから使ってみたい」と思うアーリーアダプターを集め、社内に浸透させる仕組みを採用している。

「各種セミナーなどもこの間で増やしていますが、参加する社員は20代から50代までと、バラエティに富んでいます。このような取り組みに参加する方々は、当然情報感度が高くて、アンテナを張っている方々ばかりです。彼・彼女らにアーリーアダプターになってもらい、まわりの社員におすすめしてもらえたらと。ITツールを当たり前に使いこなせる人が増えると、イノベーションが生まれやすくなるはずです」

マイナビが超えるべき2つの課題。

坂本は、全社横断のデジタル戦略を進めるなかで、マイナビが超えるべき2つの課題が明確になったという。1つは、あらゆる企業が直面している「デジタル人材の枯渇」だ。

今後2〜3年の間に、外国籍の社員を更に拡大して10%程度まで引き上げたいと考えている。グローバル企業を目指すのであれば、外国人材を雇用するのは当然のこと。加えて、インドや北欧をはじめ、各国にはITスキルに長けた人材が多くいる。日本国内の労働力人口が減り続けている現状を踏まえれば、マイナビの成長戦略においても自然な流れといえるだろう。

もう1つは、社会課題へのアプローチを見据えた「自社が持つアセットの活用」だ。さらなるCXの向上を目指すなかで、「よりオープンに自社のアセットを活用していくべき」というのが坂本の主張だ。

「マイナビには就職、転職、アルバイト、ウエディングなどのサービスがありますが、いずれも、人生のなかで必要となったタイミングで使うサービスです。『転職』『アルバイト』などと検索して、マイナビがヒットすることで利用に至る。そうやって顕在化されたニーズが生まれてからマイナビのサービスを使われるのは、よいCXとはいえないだろうと。よりよいCXを提供するには、自社のアセットを活用して企業さまとコラボレーションするなど、日常的にマイナビのサービスに触れてもらうためのイノベーションを起こしていかなければと思います。データをオープンに活用することで、今マイナビのサービスを使っていない人、これからユーザーになる人を対象にしたサービスを提供していきたいですね」

情報格差のない社会を実現する。

現代では、テクノロジーの進化によって、ある程度の未来予想ができるようになった。便利な一方で、「正解の選択肢だけを提示するのは、おもしろくない」と坂本は言う。この考えは坂本自身の美学でもあり、「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」というマイナビのパーパスにもリンクする。

「レコメンド広告やマッチングサービスは、5年、10年後にはさらに精度が上がっているでしょう。今流行しているAIも、より人間に近しい感性や思考回路を持ったAGI(汎用人工知能)の領域にアップデートされていきます。その結果、レコメンドも過去のデータからだけではなく、より人間的な感情に沿った形で、あらゆることを支援することが可能になります。ただ、『AさんがB社に就職した場合、3年後に転職する確率は98%です』といった未来予測が出たところで、つまらないですよね。その人の可能性をつぶすことにもなりかねません。選択肢を狭めるのではなく、広げるようなサービス提供がベストだと思っています」

そのうえで坂本が個人のパーパスとして掲げるのが、「あらゆる人がデジタルの恩恵を受けられる社会を実現する」ことだ。テクノロジーが進化しても、一部の人や企業だけが得をするような不平等が生まれてしまえば、よい社会とは言えない。

「私自身は、IT×マーケティングの掛け算によりさまざまな地方活性、スポーツのデジタル化などの取り組みに影響を受けてきました。弱りつつある地域・産業・エリアに光を当て、再生させていくストーリーは数多くありますし、それらはグローバルにおいて凄まじいスピードで進んでおり、ほとんどは民間企業における力が大きいと思っています。そのように、地域だけでなく人種や国境を超えた、あらゆる人に寄り添いながらサポートする事業はマイナビに合っていると思うし、私自身がやりたいことでもあります」

事業を通して社会課題を解決する。それは大企業に成長したマイナビが当然やるべきことであり、今後は人材以外の領域にも更に力強く踏み込んでいくべきだ、と考える。テクノロジーによって人種や言語の壁が超えられるようになった今、都市部から地方へ、日本から世界中へ、マイナビのサービスを広げたい。それが坂本が抱く、今の野望だ。

かつて抱いた起業の願いは実現していない。しかし、メンバーとともに走り続けるうちに、自身の願いは、あのころの何倍もスケールの大きなものとなっていた。そう、未来は予測できないからおもしろいのだ。

株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 本部長/執行役員

坂本 一弘(さかもと・かずひろ)

Webコンサルティング企業を経て、2007年、毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に入社。新規事業『マイナビバイト』の事業立ち上げに従事。
2013年、『マイナビバイト』のメディア責任者として開発、編集、プロモーション等を担当。2015年、『マイナビバイト』の事業戦略、メディア戦略の統括責任者として、事業発展のため戦略構築の立案をメインとして担当。
2021年、システム統括本部担当となり、全社コーポレートIT、セキュリティ、ガバナンス、新規技術領域の研究開発などを推進しながら、全社のデジタル戦略の構築、体制の整備に従事。
2022年、デジタルテクノロジー戦略本部の設立とともに本部長として着任、現在に至る。

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