PURPOSE STORY

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未来につながる青春の1ページを描いてもらいたい。

株式会社マイナビ コンテンツメディア事業本部 マイナビキャリア甲子園 運営責任者 鈴木 麻友(すずき・まゆ)

「パーパス」ってなんだろう?

「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。

《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》

これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。





高校生の戦いに、大人も胸を熱くする。毎年、あたらしいドラマが生まれる。

高校生たちがビジネスアイデアを競い優勝を目指すコンテスト、「マイナビキャリア甲子園」。彼らが挑むのは、日本を代表する企業・団体が提示した、答えのない問い。最大4名からなるチームを結成し、たった10分間で、審査員を前に各々が考えた「答え」をプレゼンする。緊張した面持ちでステージに向かう者、チームで円陣を組み気合いを入れる者……甲子園さながらの熱風が、会場全体を包み込む。

この大会を2020年から率いてきたのが、コンテンツメディア事業本部でマイナビキャリア甲子園の責任者を務める鈴木麻友だ。「学生と向き合う仕事がしたい」という強い想いを胸にマイナビへ入社した彼女は、マイナビキャリア甲子園に挑む高校生たちとどのように向き合ってきたのだろうか。

高校生たちとリアルに向き合う仕事がしたい。

「勝負の10分間に、青春を詰め込んで」

YouTubeにアップされている、第9回マイナビキャリア甲子園・決勝大会のドキュメンタリーは、そんなキャッチコピーから始まる。

「誰かに勝つ、負ける。泣くほど嬉しい、泣くほど悔しい。そういう瞬間って大人になっても覚えていますよね。そんな、感情が胸の底から湧き出てくるような原体験を、私たちはつくっているんじゃないかと思います」

運営責任者を務める鈴木麻友は、熱のこもった口調で大会に対する想いを語る。2014年にスタートし、2023年に第10回目を迎えるマイナビキャリア甲子園。社会経験のない高校生たちが、協賛企業・団体から出題されたテーマを自由に選択し、最大8ヶ月かけてその答えを導き出すビジネスコンテストだ。プレゼン動画審査、準決勝大会を経て、協賛企業・団体ごとに代表チームが決定。最後は決勝大会のステージに立ち、熱いプレゼンを繰り広げる。鈴木が所属する事業本部に事業が移管されてきたのは、2020年のことだ。

「当時の『キャリア甲子園』は社内でも知名度が低く、私自身も移管されてからはじめて存在を知りました。まさかこの大会が自分のライフワークになるとは、そのときは想像もしていませんでした」

鈴木は自身の仕事にかける想いを、つぎのように語る。

「私は学生のころから、高校生や大学生に関わる仕事をしたいと思っていました。自分自身、10代後半の多感な時期に、たくさんの先輩方からあたらしい世界を見せてもらった経験があります。だから自分も誰かにそういうきっかけを与えたい、そういう仕事がしたいと考えてきました」

新卒で教育事業を展開している企業に入社し、入試広報のサポート事業に従事。しかし、目指したい方向とは何かが違うと感じていた。もっと、学生たちの“今”に向き合う仕事がしたい。そうして2013年にマイナビに中途入社する。

「入社後は営業職からスタートしましたが、どうしても学生とリアルで接する仕事がしたかった。なんとか聞き入れてもらえないかと、学生向けの事業を勝手に企画し、当時の事業部長にプレゼンをしたこともありました(笑)」

入社から数年後、鈴木が待望していた、学生向けのサービス事業を展開する部署が立ち上がることに。大学生コミュニティ『学窓ラボ』の立ち上げやZ世代をターゲットにしたプロジェクトなどに携わったのち、マイナビキャリア甲子園の運営メンバーに。自分を奮い立たせるため、「運営責任者」と名乗ることにした。

教室では味わえない体験を。

当初、「キャリア甲子園」として始まった大会は、2022年の第9回大会から社名を冠する「マイナビキャリア甲子園」に。さらなるグロースを目指すという方針を受け、名称を変更した。

「メディア露出が一気に増え、企業・団体からの協賛や後援、サポートが格段に増えました。社内のさまざまな場所でマイナビキャリア甲子園の名前を聞くことも増えて、このスケールに中身が負けないようにしなければ……と内心ドキドキでした」

第9回大会には、全国2,318チーム、8,959人の高校生が参加。「ライフスタイルや価値観の多様化が進むこれからの社会に寄り添った、あらたな保険サービスを創造せよ」「インクルーシブで豊かな社会の実現のために、デビットカードの特長を踏まえ、ストレスフリーなあたらしい生活様式に取り入れたいサービスを提案せよ」(※)といった、大人でも考えあぐんでしまうような難しいテーマに、高校生たちはひるむことなく挑む。そんなマイナビキャリア甲子園の魅力は「学校の教室では味わえない体験ができること」だと、鈴木は断言する。

※実際に出題されたテーマタイトルから一部表現を変えています

「同世代と競い合う体験と、他者から評価される体験、この2つが大会の醍醐味です。みなさん唯一無二のアイデアを披露してくれますが、ビジネスコンテストである以上、本大会では実現可能性が評価され、勝ち負けが決まります。学校という自分がいる世界の外を知ることで、世のなかの広さや、価値観の豊かさに触れてほしいと思っています」

近年、教育の場では「学びの質」が変わりつつある。これまで主流だった、暗記に頼る詰め込み式の学習方法や、教師から生徒へ一方的に指導するスタイルから、これからの社会で必要になる力を育てる方向へとシフトしている。(※)

※2022年4月から、高等学校では“新”学習指導要領に沿った授業がスタートし、教科の垣根を越えた「探究学習」が必修科目となった。生徒たちは自分らしさや将来の生き方などについて、みずからテーマ・課題を設定。その目標に対し、他者とともに試行錯誤しながら能力や知識を養っていく。

「学校の先生方は、この課題に試行錯誤しながら取り組んでいらっしゃいます。なかには、探究学習の一環として、カリキュラムにマイナビキャリア甲子園を導入してくださる学校も。私たちも、先生方から寄せられる意見やアイデアを参考に、大会の内容をアップデートし続けています」

マイナビキャリア甲子園に参加する学校が増える一方で、参加者は特定の学校が中心となっていることも確かだ。「裾野を広げていくことが今後の課題」と、大会の進む先を鈴木は冷静に見つめている。

「地方大会ができるといいかもしれない。甲子園の21世紀枠のように、イレギュラーな枠組みがあってもおもしろい。“マイナビ”だからこそのスケールやリソースを生かして、何かできることがあるんじゃないかと、模索している最中です」

人ひとりの人生を変える力がある。

マイナビキャリア甲子園を通じて、鈴木は高校生の新鮮な価値観に驚かされている。

「高校生はいい意味で社会に対する知識が少ないので、好奇心のおもむくまま。企業・団体の名前や規模はまったく知らないけれど、テーマに惹かれたからエントリーする、といった子たちも多いです。プレゼンでは、大人も驚くほどクリエイティブなスライドや、地道な調査から得られたデータなどが展開され、寸劇を交えて表現するチーム、Webサービスのデモ画面や商品の試作品を披露するチームなども。たった10分の間に工夫が盛り込まれていて、思わず見入ってしまいます」

鈴木たち運営チームは、対策講座を開いたり、企業・団体と一緒につくった教材を各チームに提供したり、ときには個別のフォローアップも行いながら、参加者をサポートする。それぞれのステージを経て、彼らが大学や社会へと羽ばたく姿を見守るのは、大会運営における大きな魅力のひとつだ。2023年の春にも、うれしい報告が届いた。

「マイナビキャリア甲子園で取り組んだテーマが、ある生徒の進路選択のきっかけとなり、志望する大学への入学が叶ったそうです。マイナビキャリア甲子園には、人ひとりの人生を変える力があるかもしれない。そう考えると、もっと彼・彼女らとに向き合っていこうと、気が引き締まります」

第9回マイナビキャリア甲子園 決勝大会出場者

大会を勝ち進むのはすばらしいことだ。しかし「マイナビキャリア甲子園の価値はそれだけではない」と、鈴木は言葉に力を込める。

「第9回大会が終わったあと、ある生徒からメールが届きました。そこには『2年連続で決勝に進めなかった自分のことが許せなくて、受け入れられなくて……。お話しする機会をいただけませんか』と、やるせない思いがつづられていたんです」

鈴木は「もちろん、ぜひお話ししましょう」と、オンラインで会うことに。

「話をするうちに、その子は『マイナビキャリア甲子園は私のすべてだったんです』と泣き出してしまいました。何ヶ月も準備を重ねて頑張ってきたのに敗退してしまい、手元にはもう何も残っていないように感じると……。でも私は、そんなことはないと思うんですよ」

マイナビキャリア甲子園では「答えのない問いを考える」をコンセプトに掲げている。人生において、答えのある問いのほうが少ない。それでも考え続けることで、自分なりの正解が見えてくる。

この大会は、自分にとってどのような意味をもっていたのだろうか。参加することで、自分は何を得たのだろうか。今すぐには答えが出ないかもしれない。それでも考え続けてほしい。その過程は絶対に無駄ではない。

「私も言葉に詰まるほど泣きながら、そんなことを伝えました。高校生たちと接していると、こちらも本気になります。中途半端な態度では向き合えない。そして、これこそが、私がやりたかったことだと感じるんです」

答えのない問いに挑み続ける。

マイナビのパーパスが策定されたとき、鈴木は「マイナビキャリア甲子園に追い風が吹いた」と思ったそうだ。

「今の高校生は、未来を描きにくい時代を生きています。それでも、彼らはあたらしい価値観やテクノロジーを柔軟に取り入れて、楽しく、たくましく生き抜こうとしているように見えます。私たちは、彼らの未来をつくるパートナーとして、その生き方に伴走したいんです」

この10年間で、マイナビキャリア甲子園の果たす役割は少しずつ変わってきた。

「以前は、目の前の高校生に対して、機会を与えることだけを考えて走ってきました。現在は、彼・彼女らのアイデアや若いエネルギーを社会に広く発信していくことも、私たちの役割だと感じています」

「大会参加をきっかけに、高校生たちがみずからアクションを起こした実例がある」と、鈴木は教えてくれた。

「第8回大会で優勝したチームが挑んだテーマは、『女性の貧困と生理』でした。彼女たちは、まずは身近なところから自分たちのアイデアを形にしようと学校側に掛け合い、校内すべての女子トイレでの生理用品常設化を実現したんです」

この取り組みは、地元メディアにも取り上げられた。キャリア甲子園での出会いがきっかけとなり、社会を動かした事例はほかにもある。直近では、第9回大会で視聴者賞を受賞したチームととある企業の想いが一致し、大会史上はじめて、高校生が考えたアイデアが実行されることになった。

「高校生のアイデアが世のなかをリアルに変えていく。そんな実例が増えれば、若者に対する見方や価値観も変わっていくのではないでしょうか」

学生時代から志した仕事を目の前にし「今、最高に充実している」と話す鈴木。最後に、鈴木自身のパーパスについて聞いてみた。

「先ほどお話ししたとおり、マイナビキャリア甲子園では『答えのない問いを考える』をコンセプトに掲げています。大会が終わっても、そこで出会った高校生たちのことを考え続けること。そして、よりよい運営ができるようアップデートし続けること。私自身も、答えのない問いに挑み続けています」

高校生一人ひとりの価値観や経験が、これからの未来をつくる。マイナビキャリア甲子園を通じてまかれた種は、この先どんなふうに芽吹いていくだろうか。

株式会社マイナビ コンテンツメディア事業本部 事業戦略・推進統括本部 事業推進統括部 イベント運営部 イベント運営課 マイナビキャリア甲子園 運営責任者

鈴木 麻友(すずき・まゆ)

2017年から大学生のリアルコミュニティー「学窓ラボ」の立ち上げに関わり、大学生のリアルを発信するために、全国300人以上の大学生組織を束ね、イベント企画・商品開発・マーケティング・調査など、学生とともにさまざまなクライアントの課題解決に携わっている。
2020年からマイナビキャリア甲子園運営責任者として、全国の高校生が主体的に学び、答えのない問いに挑戦する機会の創出及び大会運営を行う。

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