「マイナビAGENT」の存在意義を問い続ける。
「パーパス」ってなんだろう?
「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。
《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》
これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。
求職者と企業をつなげ、両者の可能性を追い求めていく。
15年以上にわたり人材紹介事業に携わっているゼネラルエージェント事業本部 事業推進統括本部 統括本部長の堀江陽平は、それが「人材紹介の本質」だと語る。
マイナビが展開する人材紹介サービス「マイナビAGENT」は、転職エージェントサービスの本質を突き詰めることで、自社の強みを見いだしてきた。しかし、事業規模が拡大するなかで堀江が感じているのは「変革」の必要性だ。
「マイナビが掲げるパーパスを実現するためには、個人のパーパスは必要ない」と話す堀江の本意を、そのキャリアパスからひもといた。
何をやりがいとし、どんな想いで働いていくのか。
就職活動では、業界も志望動機も「特に軸がなかった」という堀江。しかし、面接を重ねるうちに面接官の仕事ぶりが目に留まり、人材業界を志望するようになった。
「面接官を見ていて、『自分ならもっとうまく採用活動ができるんじゃないか』と思ってしまったんですよね。当時は新卒採用のコンサルティング業が流行っていたこともあり、そういった事業を担うベンチャーに新卒入社しました」
だが、配属されたのはコンサルティングではなく、人材紹介の部署だった。希望から外れていたものの、MVPを最多受賞し、最年少でマネージャーに昇格するなど頭角を現していった。
「当時は社員が10名ほどの会社で、明確な事業戦略なんてありません。みずから提案すれば何でもできる環境でした。それまでは本気で努力したことがなく、のらりくらりと過ごしてきましたが、『もう言い訳できない』と腹をくくって取り組み始めたら、どんどんおもしろくなり、ベストを尽くす働き方にハマっていきました。努力を続けて結果を出し、成長できたという体験を、どこかで欲していたのかもしません」
3年ほど勤務したのち、地元の広島へ帰り、家業のイベント制作事業を手伝うことにした。もともと、地元へ戻る意思はあったが、本音では「人材紹介事業に飽きていた」のだという。
「人材紹介事業は『求職者の相談に乗る』『企業の求人依頼を受けてアドバイスをする』『求職者と企業をマッチングさせる』『入社が決まる』といった一連の流れを繰り返します。そんなルーティンに、3年経ったときに飽きを感じてしまったんです」
しかし、約3年にわたり家業の手伝いをするうちに、「自分は人材紹介の仕事が好きだったのだ」と気づかされた。
「何をやりがいとし、どんな想いを持って働くのか。そういった意味で、イベント制作の仕事は自分にはまったくピンときませんでした。在籍中には人材紹介事業を自分で立ち上げてみたものの、地方には市場がなく、もう一度東京で本格的にやってみようと転職活動を始めたんです」
転職活動で軸にしたのは、一定のブランドパワーがありながらも、発展途上で成長が期待できる企業。社員200名ほどで、堀江いわく「いい感じにカオスだった」のが、当時マイナビから分社化されていた「毎日キャリアバンク(現・マイナビ※)」だった。
※同社は2011年11月、「株式会社マイナビエージェント」に社名変更。翌2012年10月、マイナビに吸収合併され現在に至る。
環境の変化で気づいた、人材紹介の奥深さ。
堀江が配属された「マイコミエージェント(現・マイナビAGENT)」では、一般企業のあらゆる業界・職種(IT、EMC、金融、不動産、商社、消費財、マスコミ・サービス全般)を網羅する、ゼネラル型人材紹介サービスを展開していた。
転職後にまず堀江が驚いたのは、求められるクオリティの高さだ。人材紹介事業におけるKPIは書類選考通過率や成約率で、大手でも10〜30%程度が実情。一方、当時の毎日キャリアバンクでは、書類選考通過率のKPIを50%としていた。
「業界平均の約2倍を当たり前に求められるなんて、『マジか』というのが本音でした。ここでは自分の常識から変えていかなければいけないんだな、と実感させられましたね」
圧倒されるほど高いハードルに立ち向かうなかで見えてきたのは、1社目では気づけなかった自身の至らなさだった。
「人材紹介に飽きたと感じたのは、自分が浅い仕事をしていたからだったんです。一連の流れは同じでも、一人として同じ求職者はいないし、一社として同じ会社はありません。結果が出なかったなら、それは自分の力不足なんです。もっと力を付けて、一つひとつの案件に向き合えば、結果はいくらでも変わる。だからこそ、人材紹介の仕事は奥深くて楽しいんだ、ということに気づいたんです」
元来、無理難題であるほど立ち向かいたくなる性格。「うまくいかないのが当たり前」な人材紹介事業の難しさが、堀江のなかで眠っていたストイックさに火を点けた。
エージェントが存在する意義を徹底追求する。
マイナビへ入社して以来、堀江は一貫して人材紹介事業に携わっているが、その役割は肩書とともに変わっている。営業戦略を立て営業メンバーを育成する営業統括部長を経て、2022年10月にマイナビAGENTの事業全体の企画・推進・運営を担う、事業推進統括本部の本部長に就任した。
「とにかく量をこなして成約数を増やす人材紹介会社も多くありますが、マイナビはそれとは異なる事業戦略を取っています。一人ひとりの求職者・一つひとつの企業と向き合い、両者が満足するようなクオリティを追い求めてきました」
近年はサービス品質が外部からも評価されており、「オリコン顧客満足度調査」では転職エージェント部門で、2023年、2024年と2年連続で総合1位を獲得した。マイナビAGENTが追い求めてきた「質」こそが、エージェントサービスの価値だと、堀江は断言する。
「テクノロジーの進化によって、求職者と企業のマッチングはしやすくなりました。しかし、採用活動はそれだけで完結するほど単純ではありません。求職者のなかには、自分がやりたいことが明確に把握できていない人や、どんな職種を目指すべきかわからない人がいます。企業側も同様です。そういった課題を見抜いてアプローチするのは、エージェント、つまり『人』にしかできないことです」
目の前の相手が、真に何を求めているのか。本人が気づいていないことまで突き詰め、示唆できなければ、そもそもエージェントは存在する意味がない。
「そのような考えのもと、マイナビAGENTは営業メンバーやその上に立つ管理職を育成して、ここまで成長してきました。ただ、育成だけでどうにかするのは、そろそろ限界かもしれません」
1段階上のレベルにたどり着くためには、組織そのものの“しくみ”を変えていく必要があると、堀江は考える。
「変革の鍵は、アナログとデジタルの融合です。私たちは『人の力』を重視しているものの、AIやツールなどに任せることで効率化できる領域もあります。そうして捻出できた時間で、お客さまに向き合うための営業機会を増やしていく。そんなしくみづくりを目指しています。何をデジタルに任せ、何をアナログのまま残すか、そのバランスを常に考えていきたいですね」
求められているのは「抜本的な改革」。
堀江が統括本部長に就任して1年半が経過した24年2月現在、改革の成果は数字上でも見えてきている。それでも業界トップの背中は程遠く、その事実に危機感を覚えているという。
「人材紹介サービスは業界シェア1〜3位が独走していて、特に1位と2位は圧倒的な強さがあります。マイナビAGENTは4位〜8位にランクインしているのですが、ここ数年は団子状態。現在の目標は、5位以下と差を付けて単独4位になることです」
一定の事業規模に成長した今、さらに数字を伸ばすならお客さまの数を増やすしかない。そのためには、「根本から考え方を変えなければいけない」と堀江は思案している。
「これまでは、自社の得意領域であるITエンジニア職や営業職などの求人にフォーカスし、サービスの質を追い求めてきました。しかし、それぞれの領域にはお客さまの絶対数があり、全員がマイナビAGENTを選ぶわけでもない。それなら、私たちがあたらしい世界に踏み出して、より多くのお客さまにサービスを届けていく必要があるんです」
「築き上げてきたものを壊してつくり変える」という難易度の高いチャレンジは、堀江にとってなにより楽しい仕事だ。2024年は、マイナビAGENTが新章に突入するタイミングかもしれない。
挑戦を“挑戦”と思わず、“普通にやる”。
今や事業を率いる立場となった堀江は、常に「マイナビAGENTは何のために存在しているのか?」という問いを繰り返してきた。だからこそ「個人のパーパスは必要ない」と結論づけている。
「“一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。”というマイナビのパーパスは、求職者と企業の可能性を追い求める人材紹介の仕事ともリンクします。このパーパスに深く共感しているからこそ、それだけを追い求めていきたいんです」
最後に、仕事における哲学をたずねてみると、何とも堀江らしい答えが返ってきた。
「挑戦を“挑戦”と思わず、“普通にやる”ことですかね。やるとなったら、それ以外に選択肢がないというか。そこにはドラマティックなストーリーなんて必要ないし、キツいこともただ普通にやる。過ぎ去った過去や自分の感情には興味がなくて、気になるのは『今』と『未来』、そして『事実』なんです」
いずれは、マイナビAGENTを業界No.1のサービスに成長させる。その目標を追いかけながら、堀江は一人ひとりの可能性に向き合い続けるのだ。
株式会社マイナビ ゼネラルエージェント事業本部 事業推進統括本部 統括本部長
堀江 陽平(ほりえ・ようへい)
人材ベンチャーやイベント制作会社を経て、2011年7月、毎日キャリアバンク(現・マイナビ)中途入社。人材紹介領域において、営業統括部長、紹介事業のマーケティング部門統括部長を務め、現在は事業本部全体の企画・推進・運営を行っている。