人事の視点から、マイナビの変革をあと押しする。
「パーパス」ってなんだろう?
「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。
《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》
これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。
「人事」を通して、人と組織の可能性を開放していく。
それが、マイナビの人事統括本部のなかでも「戦略人事」——事業成長のための人材育成・配置・制度企画を担う、上澤田真吾のパーパスだ。
マイナビは今、事業の急拡大を経て「転換期」の真っただ中にある。そして、人事制度の改訂や新システムの導入により、変革のための“原動力”を生み出してきたのが、上澤田率いる人事部だった。
人事部長就任から7年、これまでに上澤田が推し進めてきた数々の取り組みと、マイナビの未来を担う次の一手とは。
「複眼的思考力」が身についた若手時代。
2004年、マイナビに新卒入社した上澤田は、入社と同時に立ち上がったHRコンサルティング事業部に配属された。「何もないところからのスタートでした」と、当時を振り返る。
「同部署は、マイナビの新卒・転職関連サービスとアセスメント(評価・分析のための測定ツール)を組み合わせた商材を販売していたのですが、配属された当初は何を売るかも決まっていない状態だったんです。ゼロから商材をつくっていくのは、新人の私にはかなりハードでしたね」
同部署の主なターゲットは中小企業だった。そのうちの多くは人事専任者が不在であり、経営層と直接商談するケースがほとんどだったという。
「お客さまはビジネスのプロばかり。『モノがいいから買ってください』は通用しません。今この場で、これを売るという〈点〉の視点ではなく、相手が会社をどうしていきたいのかを聞きながら、〈線〉や〈面〉の視点で営業活動をしていました」
決して若手らしい伸び伸びした働き方ではなかったが、ひとつのものごとを経営側のみならず、採用側や学生側などの視点でとらえる「複眼的な思考力」が身についた。
その後は、同部署の解散により2007年に『マイナビエージェント』を扱う紹介事業本部へ異動、さらに2009年には『マイナビバイト』を扱うアルバイト情報事業本部の立ち上げ期を経験。そして2016年、思いがけない転機が上澤田に訪れた。
全社員の自己申告から見えてきた、数々の課題。
上澤田が配属されたのは、人事部門のなかでも、事業成長のための人材育成・配置・制度企画といった「戦略人事」の機能を担う新たな部署だった。
上澤田が人事部長として同部に配属された2016年は、マイナビが急拡大し、事業が多角化してきたタイミングにあたる。各事業部が力をつけていく一方で、人材流動の硬直化が見られるようになっていた。
「当時のマイナビは、多様な事業を経験したくても柔軟に異動できない、各事業の独立性が高まってきたゆえに全社員のキャリア志向を把握できる人間がいない、といった課題を抱えていました。そこで、組織の状態を可視化し、各社員の才能や能力を生かす『タレントマネジメント』に注力する必要に迫られていたんです」
配属後、真っ先に上澤田が着手したのは、全社員の3年分の自己申告に目を通すこと。その結果見えてきたのは、異動のしづらさにとどまらない、人事面での大きな課題だった。
「異動云々の前にリーダーシップも足りていないんじゃないか、人事制度のしくみそのものを変えなければいけないんじゃないかなど、読めば読むほど課題が浮かび上がってきましたね。いうならば、マイナビについた古い“サビ”を落としていくのが、私に求められている仕事だったんです」
人事制度を変えサビを落とす。
浮かび上がってきた課題を根本から解決するため、上澤田は時に周囲に反対されながらも、新制度やシステムの導入を次々と実現していった。
「組織状態を可視化するエンゲージメントサーベイやタレントマネジメントを促進する専用システムの導入、キャリア志向が強い社員に挑戦を促すための『社内公募』の新設、チームビルディングや多様性の理解を促すための社内研修のコンテンツ設計などに、数年かけて取り組んできました」
中でも上澤田が注力してきたのが、2018年からスタートし、2023年度に施行された「人事制度の改定プロジェクト」だ。まず、10年後の未来を見据えてマイナビがどうあるべきかを、当時の取締役と議論しながら方向性を定めていった。
「将来を見据えて市場競争力につながる人材を獲得し、社員の可能性を活かせる強い組織を実現するために、『給与・評価体系の改編』『等級・職位の分離』『多様な働き方の導入』の3つを中心に据えて、改定の準備を始めました」
例えば、給与・評価体系においては、現在の組織や業務の実態に適していない部分が残った古い制度であったため、現代に求められるリーダーの資質や行動を評価して、育てていくための制度に変える必要があった。また、社員の柔軟な配置転換を実現するにあたり、「等級」と「職位」を分離する必要性も生まれていた。
「等級とは、どの部署に移っても変わらないものです。一方職位は、部署における役割を指します。新制度では『もっと部署をまたいだ活躍の仕方があっていいはずだ』という考えから、部署ごとに職位を柔軟に変えられるようにしました。これまでのマイナビの特徴であった、事業単位で必要な社員を抜擢できる柔軟性に加え、管理職の社員が職位を外してでもあらたな領域に挑戦できるようになったわけです」
5年がかりとなった同プロジェクトだが、実は本来、2021年度には施行されていたはずだった。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2023年度に延期となったのだ。
「人事制度の寿命は、3〜5年と言われているんです。本来なら、すでにリニューアルを考えなければならないタイミングに来ているはずで、それについては思うところはある。それでも、このプロジェクトを施行できたことで、マイナビの長い歴史の中で作られた古いサビを少し落とせて、つぎに進む準備ができた感覚はあります」
次世代のリーダー像をつくりたい。
現在、上澤田がもっとも力を注いでいるのが「次世代リーダーシップの開発プログラム」だ。プロジェクトの立ち上げにあたり、現在のマイナビのリーダー像を知る目的で、上澤田は役員に対して360度評価※を実施した。
※上司や部下、同僚、他部署など、複数人が従業員を評価する手法
「見えてきた特徴は、『長期的ビジョンより短期的業績』『戦略立案より戦術実行』『共創より競争』の3つでした。向こう傷を恐れず先頭を切り、自分が最前線で戦って、徹底的に戦術を実行できる強さを持った“将軍タイプ”のリーダーが、これまでのマイナビを支えてきたわけです」
しかし、これからのマイナビにはもっと多様なリーダー像があってもよいと、上澤田は考える。
「旧来のリーダー像は、マイナビにとっての宝物です。でもこれからは、戦術を立てるのが得意なリーダーや全体を俯瞰して見れるリーダー、人の気持ちを掴み“和”を生み出すリーダーなど、多様なリーダー像と、多様なキャリアの形が求められるはずです」
そのため、次世代のリーダーシップの開発プログラムには、戦略立案などビジネススキルの強化にとどまらず、組織をマネジメントするための人間力を鍛えるためのプログラムも多く盛り込む予定だという。
「先のわからない時代だからこそ、このプログラムもスタート後3年以内に価値を感じてもらえなくてはいけない。責任感を持って取り組んでいきます」
どこまでも「人の可能性」を追い求める。
7年以上にわたり、人事部長として組織の活性化に尽力してきた上澤田。現在、その取り組みの成果は、少しずつ目に見え始めている。例えば2018年に開始した社内公募は、初年度の異動が9人だったのに対し、2023年は年間で約150人が異動するまでに浸透。近年は、エンゲージメントに対する意識が変わってきた印象もあるという。
「昨年の全社の表彰式で、組織のエンゲージメント向上に寄与した社員が表彰される場面がありました。『エンゲージメント』という言葉さえ浸透していなかった時代を経て、ここまで変わったのかと感激しましたね」
さらに、組織としてのコンディションを引き上げる手助けとなっているのが、2023年8月に策定されたパーパスの存在だ。パーパスが策定されてから、マイナビのエンゲージメントサーベイは右肩上がりになっている。
「パーパスはお仕着せのスローガンではありません。社員それぞれが、自分にとっての“北極星”に向かって進んでいくなかで、みんなが共通して心に留めているもの。それがパーパスという感覚です」
そんな上澤田自身のパーパスは、人事部のパーパスそのものでもあるという。
「配属される以前から『人の可能性や才能、情熱を開放するための力になりたい』と思い続けてきました。私が介在することで、誰かの心に情熱を灯し、その人を光り輝かせたい。人事部長の立場を与えられている今は、マイナビの社員一人ひとりと組織全体が意志を持って進めるよう、あと押しできたらと思います」
株式会社マイナビ 人事統括本部 人事部 部長
上澤田 真吾(かみさわだ・しんご)
2004年4月、毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)入社。HRコンサルティング事業部にて主に中小企業の採用支援業務に従事。2007年4月より紹介事業本部にてRA・CAを担当した後、2009年3月よりアルバイト情報事業本部にて法人営業や新規拠点の立ち上げを担当。
関東営業統括部長、営業推進部長を経て、2016年12月より現職。タレントマネジメント推進をはじめとした人事企画業務を担当している。