PURPOSE STORY

74

「未来に踏み出すための勇気を与える」企業を目指して。

株式会社マイナビ 経営企画本部 セグメント経営推進1部 部長 井上 慶子(いのうえ・けいこ)

「パーパス」ってなんだろう?

「ミッション」や「経営理念」と似ているけど、ちょっと違う。
企業と社会のつながりが欠かせない今、
ビジネスシーンで“存在意義”と訳されるこの言葉が、
多くの企業に求められている。

《一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。》

これは、マイナビが掲げたパーパスとともに歩く、
社員一人ひとりの物語。





人生において、絶対的に正しい選択というものは、ないのかもしれない。しかし「選択肢がどれだけあるかを知り、そのなかから主体的に選びとることはできる」と、経営企画本部セグメント経営推進1部の井上慶子は言う。

選択肢の幅を広く持つことが大切である。学生時代の経験から、そう気づいたという井上。「誰かの可能性を広げる仕事がしたい」という自身のパーパスを描き、その想いをビジネスに落とし込んできた。採用戦略・企業研修のサポートから、ダイバーシティの推進まで、その領域は幅広い。これまでどのようなキャリアを歩み、どのようにして視座の高さを養ってきたのだろうか。井上に話を聞いた。

「人生にはたくさんの選択肢がある」と気づいた。

「子どもの頃から、人生の道は1本しかないと思い続けてきました。でも、高校生の時にある出来事がきっかけで、自分の前にはたくさんの選択肢や可能性が広がっていることに気づいたんです。私も誰かの可能性を広げる仕事がしたい、マイナビならそれが叶うのではないかと感じ、なんとかこの会社に入りたいと思いました」

マイナビに入社したきっかけについて、経営企画本部セグメント経営推進1部の井上慶子はこのように語る。井上の価値観を変えた「ある出来事」とは、なんだったのだろうか。

「私は、幼い頃から舞台やミュージカルを鑑賞するのが好きで、将来は舞台監督になろうと心に決めていました。20代でダンサー、30代で振付師、40代でオリンピックのオープニング演出をするのが夢だったんです。中高生の時は、遠方までダンスを習いに行き、終電まで練習するほど熱中していて。まわりの友だちは大学進学を目指していましたが、私は舞台監督になるために迷いがない状態でした」

ところが、高校2年生の夏に思わぬ事件が起きた。進学を目指してきた舞台監督になるための専門学校が倒産したのだ。当時はニュースにもなり、目の前が真っ暗になったという。

「ずっと追いかけてきた道は危ういのかもしれない……と、急に未来が見えなくなり、絶望的になっていた時期がありました。半年くらいは鬱屈した日々を過ごしていましたが、高校の進路指導室でパラパラと進路情報誌をめくっていたところ、キャンパスライフも面白いかもしれない、と思えてきたんです。ずっと1つの道しかないと思ってきたけれど人生にはもっとたくさんの選択肢があることを知り、ようやく光が見えた気がしました」

その時めくっていた進路情報誌が毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)の発刊する『毎日進学ガイド』。マイナビとのはじめての出会いだったという。

「私も誰かの可能性を広げる仕事がしたい、いつかこの会社で働きたい、と強く思ったきっかけになりました」

仕事の成果は、時間をかけて実っていく。

念願叶い2004年にマイナビに入社。就職情報サービスを扱う千葉支社へ配属となり、企業の新卒採用や研修をサポートすることになった。高校時代から希望した会社に入ることができ、果たして誰かの可能性を広げられたのか。

「経営者や人事担当の方とやり取りをして採用サイトやパンフレットをつくることが主な仕事でした。とはいえ入社したてでできることは、テレアポをする、営業先へ伺うためにひたすら運転する、勉強会に参加する、コピーするなど。業務に追われる繰り返しの毎日で、私は本当に誰かの可能性を広げられているのかと、自問することも度々ありました」

仕事への手ごたえは、年次が上がるにつれて少しずつ感じられるようになった。一方、長い年月を経ることでようやく得られた成果もあったという。

「入社1年目にはじめて受注したクライアントは、従業員7名の企業でした。その企業にとって初の試みとなる新卒採用について、会社説明会や面接のやり方、内定通知の出し方まで一緒に試行錯誤しながらお手伝いし、4年目に私が本社に異動するまで、毎年、新卒採用のサポートを続けてきました」

異動後、その企業を訪問する機会はなくなった。しかし、10年目を迎え、千葉支社の営業部長になったことを機に久しぶりに挨拶へ行くと、従業員は20名まで増えていたという。

「社長を訪ねると、当時採用した新卒の方がその会社の役員になっていました。メンバーが増えたことに対し、社長から『この会社の半分は井上さんでできているんだよ』とも言っていただけて、熱いものが込み上げてきましたね。新人だった頃は毎日の仕事に追われてがむしゃらでしたが、ときを経て実になるものもあるのだと気づかされた出来事です。“Connecting the dots.” まさに、今まで打ってきた点がつながり、線となった感覚がありました」

抜本的な改革で、未来そのものを明るくする。

井上のマイナビでのキャリアは、今年で21年目を迎える。2017年に千葉支社長に就任し、2022年には経営企画へ異動。現在は、マイナビグループ全体からセグメントや事業部をサポートし、あたらしい事業の創造や社会課題の解決を目指す仕事に携わっている。

「マイナビでは2022年からセグメント経営を推進しています。私のミッションは、セグメント長や各事業部の声を聞きながら、各々が協力し合える体制の構築をサポートすること。これまで個別にサービス展開していた事業部がアセットを共有し、シナジーを生む。マイナビ内の垣根を越えていくことが、この取り組みの狙いです」

また、マイナビのアセットを活用したあたらしいビジネスモデルを模索することも、井上の仕事の一部だ。

「教員の働き方改革に向けた調査・分析を受託したことがきっかけで、『教育』を起点にしたビジネスモデルの構築に取り組むようになりました。これにより、教員の採用プロモーションや教員採用試験、学校現場のDX化など、マイナビの各事業部やグループ会社が力を合わせることで解決できる社会課題が数多くあることに気づいたんです」

「業界の課題について、働き方改革の部分から向き合うことが大切だと思います。オーダーがきた求人に対して、広告を出したり人をマッチングしたりするだけでなく、ボトルネックを把握したうえで抜本的な解決策を提案する。未来そのものを明るくすることが求められているのではないかと思うのです」

社会課題の当事者は身近なところにいる。

井上は2人の子どもを育てるワーキングマザーだ。子育てとキャリアアップのタイミングが重なり、疲弊した時期もあったという。そんななか、井上の価値観を大きく揺さぶる出来事も起こった。

「千葉支社長をしていたとき、入社3年目の女性社員が、介護を理由に退職したことがあったんです。3年間も一緒に働いてきたのに、彼女が仕事と介護の両立に悩んでいたことを、私はまったく知らなかった。自分が情けなくなりました」

自分にとって縁遠いと思っていたビジネスケアラーは、実は身近な問題かもしれない。井上はそう考え、社内の勉強会に役立てるために、介護離職防止対策アドバイザーの資格を取得したという。

「社員が抱える問題は、介護だけではありません。病気や子育て、セクシュアリティなど、一人で悩みを抱え込む社員を減らすためにも、相談できる雰囲気をつくっていくことが大切だと考えています」

千葉支社にいた頃は、2021年にダイバーシティの推進に向けた勉強会「ダイバーシティWEEK」を企画・開催した。経営企画に異動してからは、有志のメンバーを募り、全国版のダイバーシティイベントを実施している。

マイナビ内で2023年に実施したダイバーシティ企画

「介護やLGBTQ+、障がい、男性育休、グローバルなど、『多様性』をテーマにした勉強会を企画し、1,350名ほどの社員が参加してくれました。マイナビのすべての社員が安心して働けるよう、今後もこのような取り組みを続けていきたいと思っています」

未来に踏み出すための勇気を与えたい。

井上にとって「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」というマイナビのパーパスは、判断に迷ったときの道標(みちしるべ)になっているという。

「少し前、進めていた企画が思うようにいかず、このまま続けるべきか、中断すべきか悩んでいた時期がありました。そんなモヤモヤを抱えながら出張に出かけたところ、マイナビのパーパス広告でジャックされた広島駅の光景が目に飛び込んできたんです。今進めているのは、誰かの未来を照らす可能性のある企画だ。そう背中を押された気がして、続けることを決意しました」

マイナビではこれまで、先の見えない未来をナビゲートし、さまざまな選択肢を提示するような事業を展開してきた。しかし、今後はステップを一段進め、「未来に踏み出すための勇気を与える」企業、「未来そのものを明るくしていける」企業になっていく必要があるのではないか、と井上は言う。

「学生時代の私のように、自分にはこの道しかないと頑なになっている人もいるかもしれません。また、自信がなくて1歩を踏み出せないでいる人もいるかもしれません。さまざまな選択肢を知ったうえで、思い切って挑戦することができる。失敗してもやり直すことができる。自分でキャリアを選びとるような、そんな未来をつくっていきたいです」

今やっていることは、将来、きっと誰かのためになる。井上はこれからも「社会課題」や「選択肢を広げること」をキーワードに、さまざまな点を打っていくだろう。数年後、あるいは数十年後、それらの点と点がつながり、実りとなるかもしれない。誰かの可能性を照らす、その日を目指して。

株式会社マイナビ 経営企画本部 セグメント経営推進1部 部長

井上 慶子(いのうえ・けいこ)

2004年新卒入社。採用戦略・企業研修のサポートに従事。営業・制作、営業部長などのマネジメントを経て、2017年より千葉支社長を5年間務める。2022年経営企画へ異動。教育やダイバーシティに関わる取り組みの企画・運営に携わる。そのほか、経済団体でのコラム寄稿、複数大学の外部講師や女性向けキャリア講座なども担当。

マイナビジョン > PURPOSE STORY > 「未来に踏み出すための勇気を与える」企業を目指して。
74